「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の改正で認められた植物エキスとは

機能性表示食品の中には、機能性関与成分として植物エキス(及び分泌物)を含むものがあります。

これは2018年に「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が改正され、機能性関与成分が明確ではないものについての態度を国が明らかにしたためです。

新しく機能性関与成分として認められた植物エキスを含む商品にはどんなものがあるのかを確認し、どのように選ぶのかを見ていきましょう。

機能性表示食品とは!成分の有効な摂取方法などを解説

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第3次改正

機能性表示食品制度は2015年に消費者が正しい知識を持って食品を選べるようにする目的で制定され、事業者の責任で科学的根拠に基づく機能性を消費者庁長官に届け出ることによって、生鮮食品を含むほとんどの食品に機能性を表示できるようになりました。

国が個別に審査していないことが特定保健用食品(トクホ)との違いです。

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第3次改正は2018年に行われ、栄養成分や機能性関与成分が明確ではない食品の取り扱いを明確にしました。

機能性関与成分の範囲を拡大してさらに機能性表示食品を増やし、事業者が消費者の需要に即した製品を生産できるようにするとともに消費者が合理的に食品を選ぶ機会を確保するのが目的です。

生鮮食品の機能性表示食品とは?新鮮な野菜や果物にも特別な成分表示がある!

範囲拡大の対象となった機能性関与成分

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第3次改正で機能性関与成分として取り扱いが明記されたのは「 植物エキス及び分泌物」です。

栄養成分としては「糖質、糖類」が機能性表示食品制度の対象となりました。「植物エキス及び分泌物」は特定の成分の機能性が部分的に説明できるもので、エキス等全体として科学的根拠が得られたものとの同等性の保証が必要になります。

エキスは単一の植物を原料としたもので、菌を原料としたエキスは菌による発酵などの加工を加えたものも含め対象外です。

最初に機能性関与成分となった植物エキス

植物エキスが機能性表示食品の機能性関与成分として認められてから、最初に届け出が受理されたのは熟成にんにくエキスです。表示しようとする機能性は「睡眠の質を向上する機能、日常生活で生じる疲労感を軽減する機能」で、パッケージには「睡眠の質を向上」と「日常生活で生じる疲労感を軽減」と表示されています。

健康な成人男女を対象とした商品で、機能性関与成分もエキスですが商品そのものもペーストタイプです。安全性の確保のため微生物試験によって遺伝毒性試験が、動物試験ではラットを使って急性経口毒性試験が行われ、その後、人を対象とした臨床試験が行われています。

遺伝毒性試験は、微生物を使っての発がん性の有無を調べる試験です。

イチョウ葉エキスの機能性関与成分

「イチョウ葉エキス」と名のつく商品を多く目にしますが、こちらはイチョウ葉エキスという機能性関与成分ではありません。イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトン、イチョウ葉フラボノイド配糖体などが機能性関与成分としてメーカーから届け出られています。

しかも確認すると、これらの機能性関与成分はエキスではありませんでした。表示しようとする機能性は、認知機能の一部である、言葉・物・位置情報を思い出す記憶力をキープする機能などで、メーカーによって表現は様々です。

実際の機能性表示には「健常な高齢者の脳の血流を改善し、記憶力を維持する」などがあります。登録されている商品は、すべてサプリメント形状です。

ショウガエキスパウダーが入った機能性表示食品

原材料としてショウガエキスパウダーが含まれる商品もあります。しかしこの商品の機能性関与成分はGABA(ギャバ)でした。この商品は「清涼飲料水」で、表示しようとする機能性は、睡眠の質(眠りの深さ、すかっとする目覚め)の向上です。

実際の機能性表示は「睡眠の質を向上」「眠りの深さ」「スッキリした目覚め」でした。ショウガ「エキス」のパウダーを飲料にしているので、機能性関与成分と勘違いする可能性もゼロではありません。それを見越したのか、サイトの機能性関与成分以外の成分の説明にはメーカーによって「機能性関与成分ではありません」という注がつけられています。

サフランエキスの機能性関与成分

サフランエキス配合という商品を見つけたので確認してみると、メーカーによる機能性関与成分はサフラン由来クロシン、サフラン由来サフラナールでした。サプリメント形状で、睡眠の質が低いと感じている人へ、生活する際の眠気を抑え、物事をやりきるのに必要な意欲を持続させる機能を表示しようとする機能性として挙げていますが、こちらも機能性関与成分はエキスではありません。

実際の機能性表示は「睡眠の質が気になる方に、意欲の維持、活動時の眠気の軽減」です。

機能性関与成分をエキスとする商品を探すのは難しい

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第3次改正によって機能性関与成分として認められたのが植物エキスだけでなく「分泌物」を含んでいるせいなのか、商品名に「エキス」の文字があったりメーカー以外が商品を紹介するサイトに「~エキス配合」と書かれていても、機能性関与成分として見た場合にエキスに含まれるものは熟成にんにくエキス以外見つけることができませんでした。

サフラン由来クロシンなどの「由来」が「分泌物」を指すのかも定かではありません。またショウガエキスパウダーは、メーカーによって「ショウガ抽出物」と言い換えられており「抽出物」と「分泌物」の区別もつきません。

消費者庁のサイトの「機能性表示食品の届け出情報検索」では、詳細表示をすると「機能性関与成分はエキスである」にチェックが入る仕組みになっています。しかしサフラン由来クロシンを機能性関与成分とする商品にはチェックが入りません。

エキスと「分泌物」が厳密に分けられているせいなのか、「由来」となっている機能性関与成分が「分泌物」とは異なるせいなのかは判断できません。機能性表示食品の機能性関与成分の範囲が拡大されたのは、消費者にとって機能性を確認してから選べる商品が増えたことを意味し嬉しいことなのですが、実際にエキスを機能性関与成分とする商品を探すのは困難です。

先の消費者庁のサイトの検索には「機能性関与成分はエキスである」という項目はありません。一方で商品名として「イチョウ葉エキス」などを使うことができるため、機能性関与成分がイチョウ葉エキスだと勘違いする可能性があります。

機能性表示食品の届け出情報は消費者庁のデータベースで手軽に検索できます

エキスと書かれていても機能性関与成分のことではありません

食品には固有名詞にエキスを含むものや原材料の中にエキスが含まれるものがあります。しかし、それは機能性関与成分を意味していません。確認するには消費者庁のサイトで食品を個別に検索し、詳細表示の「機能性関与成分はエキスである」にチェックがあるのかを見るしか方法がありません。

食品が特定されていない場合には、機能性関与成分としての植物エキスを確認することはできないので注意が必要です。

アルコール飲料でも機能性表示食品になり得るのか